仁鍼灸治療院(江戸川区・葛西)は、はりきゅう・マッサージ・スポーツマッサージ・リラクゼーションの鍼灸治療院です。
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J's diary(院長日記)
スタッフからコラム(不定期)
Field of dreams〜院長日記番外編〜
〜院長日記番外編〜
石岡院長の日記です。不定期にUPしてまいります。
vol.16(2007/9/15)


 平成19年9月9日(日)に神奈川県川崎市にある日本鋼管病院で開催された「第1回川崎スポーツ・リハビリテーションフォーラム」に出席しました。

 プログラムは午前中、主に野球・テニスの「投球障害肩」を中心とした肩甲帯および上肢部(肩?肘)の症例報告、リハビリテーションの講義が4演目とディスカッション、午後はサッカー・バスケットボールのACL(膝前十字靭帯【ヒザゼンジュウジジンタイ】)再腱術後リハビリテーションのほか、下肢部のリハ・コンディショニングの講義が4演目とディスカッションでした。
 ここに今回のフォーラムの主催者である日本鋼管病院の栗山節郎先生と(有)フィットネスアポロ社&(株)スポーツプログラムス代表の比佐仁先生のお二人による特別講演がありました。
 参加人数はおおよそ80人くらいだったでしょうか。演者や協賛スタッフを含めると100人近くの人がいました。会場はあまり広くなかったため、やや窮屈でしばらくすると部屋は少し蒸し暑いくらいになってきました。(ちょっとキツかった…)
 主催者側も第1回目ということもあり、ここまでの盛況ぶりは予想していなかったのではないでしょうか。

 参加者はスポーツトレーナーやPT(理学療法士)、またはそれらを志している学生さんが多いような印象でした。少なくとも学生ではなく、私のような臨床鍼灸師はあまり見えなかったように思います。
 今日のフォーラムの一般演題が主にスポーツ・リハビリテーションに関するものであること、また演者の多くが病院のPTやチームに帯同しているトレーナーだったこともあるのでしょう。

 それでも今回参加したのには訳があります。知り合いからこのフォーラムを紹介されたこともありますが、主催者である栗山先生、比佐先生両名には以前私自身がお世話になっていた経緯があったからです。
 栗山先生はスポーツドクターとしてはもとより、日本におけるACL(膝前十字靭帯【ヒザゼンジュウジジンタイ】)再腱術の第一人者です。1980年代より現在まで、主に冬季オリンピックや世界選手権でスキー競技の公認ドクターとして活躍されています。
 その他、医療書では多くの著書も出版されていて我々医療に携わる者は学生も含め、必ず一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。私も何冊か持っています。

 比佐先生は日本のスポーツクラブ創成期からトレーニング指導者として活躍し、トレーニング大国でもあるアメリカの理論や現状をいち早く日本に取り入れたフィットネス業界の先駆者的な人です。また自らもアスレチックトレーナーとして1987年以降20年にわたり、ソウル・バルセロナ・アトランタ・シドニー・アテネそして来年の北京でもオリンピックの強化スタッフを務めています。

 かつて私は鍼灸学校在籍時から卒業後しばらくの間、代々木にあった比佐先生のトレーニング施設&ケアルームで働いていた時期がありました。当時からこの施設はスポーツ分野では最先端の知識と技術を持っていて、多くのプロスポーツ選手や実業団のトップアスリートがトレーニングやコンディショニングのために来ていました。ここで学んだ多くの技術や知識がいま私を助けてくれることも数多くあります。
 今でもこの仕事を続けていられるのはここでの経験があったからかもしれません(笑)。

 栗山先生と比佐先生は古くからの友人関係で、当時私が働いていた施設には栗山先生が手術をした選手が術後のリハビリやコンディショニングのために来ていたり、こちらも選手に何かあれば先生に診てもらったりしていました。
 私も栗山先生が行う手術を何度か目の前で見学させていただいたこともありました。その時の率直な感想は「外科医って大工さんみたいだな」というものでした。
 なんせ患者さんの脇に置いてある手術器具はパッとみるとドリルにノコギリ、ノミ、トンカチ…、そんな感じでしたから。

 講演の合間には比佐先生にもご挨拶をしました。
 「今度○○にケアルームを作るので誰か紹介してよ。君が来るか?」なんて話もされました。もともと大柄な方ということもあるのですが、相変わらずの存在感でした。

 一般講演はほぼPTやスポーツトレーナー目線からの見解、症例報告が中心だったので、現時点で仕事に直結するものや特筆すべき内容はありませんでした。
 各演目は時間に制限があったため仕方がないのですが患部に特化した内容が多く、全身的な動きから、また体幹部からの連動性といったところまで踏み込めなかったことは少し残念でした。
 しかし、自分の専門分野以外の人の話を聞くことも時に良い刺激となります。再認識させられることや、とかく狭くなりがちな自分の視野を広げることにもなるのでそのような意味でも有意義なセミナーだったと思います。

 栗山先生の講演は『ACL再腱術とその変遷』というものでした。ACL再腱術の術式を過去から現在の方法まで解説し、それぞれの長所や短所、スポーツパフォーマンス、米国との差異、競技復帰への道のりなどを比較した内容でした。
 講演中の「数十年前はACLを断裂するとアスリートはそこで選手生命がおしまいだった。スポーツ整形の歴史はACL損傷からの競技復帰の歴史とも言える」という先生の言葉が印象的でした。

 比佐先生の講演は『米国アスリートのスポーツ環境』という内容でした。
 ご本人が実際にアメリカの様々な地域で見て来たプロ・アマのトレーニング施設やサポートシステムをスライドで紹介しながらのものでした。
 それらの写真はアスリートにとって限りなく恵まれた環境で、驚きや羨望の連続であると同時に、正直とても複雑な心境になりました。

 そもそもスポーツにおける歴史や文化、考え方は日米で大きく異なります。もちろんそのような大きなフィールドや施設を作るには広大な敷地も必要ですし、実際アメリカにはそれがあります。
 ただそれだけではなく、アメリカはスポーツを産業や商業媒体として日本よりもはるかに強く意識している部分があります。国自体がスポーツ強国として世界にアピールする意義や、スポンサーも広告媒体として、また企業のイメージとしてスポーツにお金を投資しています。国の財政や政治的な意味合いは別として、この辺りの取り組みにも両国には大きな差があります。

 「スポーツはお金をかければ強くなる」とは一概に言いたくないのですが、プロスポーツを見渡しても現実にそういった構図が多く見られます。(残念ながら)
 近年のメジャーリーグや世界の一流サッカークラブを見ても明らかで、これは選手を育成する段階でも同様のようです。

 つい先日、世界陸上が大阪で開催されたのは記憶に新しいところです。この大会で日本は結局、全競技を通して銅メダル一つという結果に終わりました。
(ちなみにアメリカは金×14、銀×4、銅×8でした)
 私も含め、世論的には「期待外れ」といった風潮があるように感じます。しかし、現在の日本のアスリートの環境を知る比佐先生は講演の中でこのようなことを言っていました。

 「日本のオリンピック選手は本当によく頑張っている」
 “頭が下がる”とも言っていました。実際、金メダルの報奨金も世界各国で大きく違いますが、日本ではまだ“生活を投げ打って”“人生を賭けて”打ち込むには厳しすぎる額しか手に出来ません。
 近代スポーツがますます科学的になっていく時代に、また置かれている環境を考えれば日本の選手が世界一になるということ自体、とんでもなく凄いことなのでしょう。

 私自身、久しく多くのトップアスリートと接する機会やトレーナーの現場から離れていますので最先端の動向にはやや疎くなっているはずです。
 しかし、今回比佐先生の講演を聴いていて何よりも愕然としたのは、私がお世話になっていた頃と比べてもスポーツトレーナー自体の環境が当時とほとんど変わっていない現実です。
 確かに日本のトップアスリート達ですら十分とは言えない環境でトレーニングをしているのですから、スポーツトレーナーと呼ばれる人達の環境が変わるはずもありません。仕事面、そして待遇面においてもです。
 中には恵まれた環境や待遇で仕事をしているトレーナーもいますがそれはごく少数です。
 もちろん“誰でもそのような仕事に就けるように”とは思いませんが、誰でも公平にトライ出来るような道筋が確立されれば良いなと思います。

 現在の体系では日本を、そしてトレーナーを取り巻くスポーツの環境はますます厳しいものになるでしょう。
 トレーナーを志す人や特に学生の皆さんは是非現状に満足せず、このような実情を知る人達のセミナーにどんどん参加して刺激を受け、自身がトレーナーとして進むべき方向性を明確に持つことが大切だと思います。

 講演の最後に比佐先生が「このようなフォーラムにドクターとトレーナー、理学療法士だけでなく、スポーツに携わる様々な分野の人が集まるようになってくれると嬉しい。」とおっしゃっていました。全くその通りだと思います。
 アスリートのみならず一般の患者さんにも言えることですが、ケガや傷害からの復帰は「チーム医療」「チームサポート」で行うことが最高の形です。それぞれの分野の専門家がそれぞれの経験や技術を活かして行くことが重要です。さらにもう一つ何よりも必要なもの…。それは患者さん自身の“復帰する”という強い情熱です。
 私自身、今後もこのような会に出来る限り参加し、見聞や知識を広げながら刺激を受けたいと思います。

 今回のフォーラムに参加し、我々鍼灸マッサージ師が担うべき役割はアスリートのレベルを問わず数多くあると感じました。選手を支えるチームの一員として、より高いレベルでその役割が求められているのです。

平成19年9月15日
仁鍼灸治療院 院長 石岡俊祐
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